自分の為に犯罪を犯した兄と人生を変えられた弟との『手紙』

あと味
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東野圭吾さんの『手紙』

東野圭吾さんの作品で、どんなに新しいヒット作が生まれても

これだけは埋もれてはいけないと思う作品のひとつ。

こんな人におすすめ

東野圭吾さんの作品。

読みやすいので、初心者さんにも自信を持っておすすめ。

そして読んだ後に”あと味”として色々考えさせられるタイプの作品。

家族、幸せ、理不尽、人の思い、差別、格差

いろんな項目について、犯罪者の家族という視点から、被害者の家族の視点まで。

中学生から大人まで、どの世代の大人にも響く作品

大体の内容

親がいなくなって、兄と弟で暮らす。

兄は弟の為に家計を支える。

若く、学歴がなくても稼げる仕事。

体を動かすこと。労働すること。

弟を支える為に頑張る。

自分を犠牲にしても、弟には良い大学を出て欲しい。

それは弟思いの優しい兄。

 

兄は労働中に怪我をしてしまう。

唯一の生きていくための術、弟を守る為の術が失われてしまう。

弟は出来の悪い兄と違って勉強はできたし、兄が家計を守ってくれたので、勉強に集中することもできた。

労働しかできない兄のようにはならないと思ってもいた。

 

兄は考える。弟だけは幸せにしなければ。大学費用をどうにかしなければ。

兄は一瞬の隙に魔がさした。

一人暮らしのお婆ちゃんの家に強盗に入ってしまうのだ。

お金を手に家を出ようと、その時、家主のお婆ちゃんに気付かれてしまう。

そして、殺めてしまう。

 

兄は逮捕された。

弟は一瞬で犯罪者の家族になってしまう。

話の主人公はこの弟。

自分は何かをしたわけではない。

悪いことをした訳ではないし、

お金を作ってきてくれと兄を脅迫した訳でもない。

 

けれど、他人から見た自分は犯罪者の家族。

学校も断念し、働き始める。

自分はこんなところにいるはずじゃない。

こんなところにいる人間とは違う。

自分は勉強ができるのに。大学にいく為に頑張っていたのに。

自分がいるはずじゃない場所の人たちからでさえ、白い目で見られる。

なんせ、どこまでもついてまわる 犯罪者の家族

 

塞いでいたけれど、出会いをきっかけに幸せを手に入れようとする。

理不尽な視線、怒り、恨み、悔しさ、

いろんな経験と自分の立場が変わる事で初めてわかる事、

そうして自分が本当にすべき事を考える。

 

感想

世の中には様々な犯罪が日々起きている。

勿論、犯罪を犯してはいけない。

けれど、生まれてから今まで何の罪も犯さずに生きてこれた人はおそらくいないだろう。

小さな、ほんの小さな罪を重ねながら生きている。

そして自分だけでなく、家族まで含めると、コントロールできるものではない。

家族は自分で選べるものでもない。

親の育て方だと呟く人もいるけれど、それだけではどうにもできない事もあるだろう。

犯罪者。

知識不足。

家族。

偏見。

背負うもの。

理不尽。

それでも。

こんな事を深く、深く考えてしまう作品。

事の成り行きを見守るだけでなく、自分なら・・・

という事を考えずにはいられない作品なのだ。

いつ、誰が弟の立場になってもおかしくない。

もちろん、誰もそんな立場になるなんて思ってない。

けれど、自分の意志ではどうにもならない。

だからこそ、誰もが考えてもおかしくない。

 

この作品で私たちはいろんな立場になる。

何人の人の感情が芽生えるでしょうか

 

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