恩田陸さんの『木洩れ日に泳ぐ魚』
この小説はたった一日の話。
同居していた男女が
別々に暮らす為に引っ越しをする当日。
その一日の間に
出会いから今日に至るまでの記憶をなぞる。
この作品の醍醐味は、女性心理の変化の過程。
それが手に取るようにわかる。
この一冊は是非とも読んでみて欲しい。
軽い恋愛小説ではない。
重い恋愛小説でもない。
女性心理のわかる人も、わからない人も。
彼のバッグに潜ませたピアス
いつか感じる残り香。
後悔でも、懐かしさでも
この男の頭をこれより未来
一瞬でも私でいっぱいにする。
その可能性に賭けてみる。
・・・というわかりやすい女性心理だ。
私のカケラを見つけた時、
彼は慌てるのか、愛おしさを感じてくれるのか、
それはもう別れるのだから私が知ることはない。
だからきっと意味のないこと。
けれど、これが女性の心理なのだと思う。
この時点では女性は男性に情があるということ。
何の情なのかはその時々だけれど、
キッパリとさようならという心情ではないと汲み取る事ができる。
ここから、一日の時間経過と回想と共に女性の気持ちが変化していきます。
ある疑惑を絡めて。
登場人物の心理がこんなにも秒までリアルに手にとれた作品があっただろうか。
それも、
あ、今糸が切れた!
というレベルでわかる。
男性の方はこういう心理は理解できないのだろうか。
それとも、女性特有だと思っている心情も、男性にもあったりするのだろうか。
|
コメント